YIA受賞者・報告記

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2026年度 (第36回日本心血管画像動態学会) 受賞者

氏名
渡邊 崇弘
所属
土浦協同病院 循環器内科
発表学会名
European Society of Cardiology Congress 2026(ESC 2026)
会期
2026年8月28日から8月31日
演題名
The RFR-FFR Delta: A Novel Physiological Signature of Microvascular Dysfunction and Long-term Mortality in Patients Undergoing LAD PCI
発表形式
Moderated Poster

学会参加報告記

2026年8月28日から31日にかけてドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology Congress 2026(ESC 2026)に現地参加をして参りました。ESCは欧州心臓病学会が主催する世界最大規模の循環器学会の一つであり、毎年世界各国から多くの循環器医療従事者が参加し、基礎研究から臨床研究、最新のガイドラインまで幅広い領域について活発な議論が行われます。ミュンヘンでのESC参加は初めてでしたが、夏の終わりということもあり比較的過ごしやすく、歴史的な街並みと近代的な都市機能が共存する大変魅力的な都市でした。

今回私は、慢性冠症候群における冠動脈生理学的指標であるResting Full-cycle Ratio(RFR)とFractional Flow Reserve(FFR)の差、すなわち「RFR–FFR gradient」の臨床的意義について口述発表を行いました。本研究では、FFR ≤0.80の左冠動脈前下行枝病変に対して待機的PCIを施行した460例を対象とし、PCI前のRFRとFFRの差が冠微小循環機能および長期予後とどのように関連するかを検討しました。RFR–FFR gradientが小さい患者では高齢、糖尿病、腎機能低下、NT-proBNP高値などの背景因子を多く認めるとともに、Coronary Flow Reserve(CFR)およびMicrovascular Resistance Reserve(MRR)が有意に低値であり、より高度な冠微小循環障害を有していました。さらに中央値5.2年間の追跡において、RFR–FFR gradientが小さい患者ほど全死亡リスクが高く、RFR–FFR <0.060は多変量解析においても長期予後と関連していました。

RFRやiFRに代表されるNon-hyperemic Pressure Ratio(NHPR)は、アデノシンなどによる最大充血を必要とせず簡便に冠動脈狭窄の機能的重症度を評価できることから、現在のカテーテル診療に広く普及しています。一方で、安静時に評価するRFRと最大充血時に評価するFFRでは捉えている冠循環の生理学的側面が異なります。本研究の結果から、この2つの指標の「差」そのものが単なる測定値の不一致ではなく、冠微小循環障害や患者背景、さらには長期予後を反映する可能性が示されました。特にRFR–FFR gradientが小さい症例では、最大充血時の血流増加が微小循環障害によって制限されている可能性があり、心外膜冠動脈の狭窄をPCIによって解除するだけでは十分に改善できない病態が存在することが示唆されます。

世界最大規模の循環器学会で、自施設で長年蓄積してきた冠動脈生理学データを用いた研究を口述発表する機会をいただけたことは大変貴重な経験となりました。近年の循環器領域では心不全、Structural Heart Disease、Non-invasive imagingなどの研究が大きな注目を集めていますが、その中でFFR、RFR、CFR、MRRといった冠動脈生理学を用いた研究を発表し、海外の研究者と直接議論できたことは大きな刺激となりました。また、ESCではLate-breaking Clinical Trialをはじめ、冠動脈疾患、心不全、弁膜症、不整脈など各領域から最新の臨床試験の結果が次々と発表され、日常診療と臨床研究の双方について今後の方向性を考える大変良い機会となりました。

学会以外ではミュンヘンの歴史ある街並みやドイツ料理を楽しむことができ、限られた時間ではありましたがドイツ南部の文化にも触れることができました。海外学会では研究成果を発表するだけでなく、世界各国の研究者の発表を直接聞き、議論し、新たな研究の着想を得ることの重要性を改めて実感しました。今回得られた経験を今後の日常診療および臨床研究に還元し、引き続き質の高い研究成果を国内外へ発信していきたいと考えております。 最後になりますが、今回のESC 2026への参加および発表に際してご支援を賜りました関係者の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。